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大阪地方裁判所 昭和53年(ワ)2319号 判決 1979年5月24日

原告 水田三郎

右訴訟代理人弁護士 仁藤一

同 真鍋能久

被告 新大阪いすゞモーター株式会社

右代表者代表取締役 小笠原光吉

被告 戸塚秀一

右被告ら訴訟代理人弁護士 菅充行

同 浦功

同 新谷勇人

主文

一  被告らは各自、原告に対し、金一九五万四八七一円およびこれに対する昭和五三年五月二日から支払済まで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用はこれを二分し、その一を原告の負担とし、その余を被告らの連帯負担とする。

四  この判決は、原告勝訴の部分に限り、仮に執行することができる。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告らは各自、原告に対し、金四〇〇万円およびこれに対する昭和五三年五月二日から支払済まで年五分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は被告らの負担とする。

3  仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

1  原告の請求を棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

第二請求原因

一  事故の発生

1  日時――昭和五〇年一二月二三日午後三時頃

2  場所――大阪市浪速区浪速町東二丁目六番地

3  加害車――普通貨物自動車(大阪四四せ三、四五一号)

右運転者――被告 戸塚秀一

右所有者――被告新大阪いすゞモーター株式会社(以下、単に被告会社という。)

4  被害車――普通乗用自動車(大阪五五い七、一八五号、タクシー)

右同乗者――原告

5  態様――被告戸塚は、加害車を被告会社南大阪営業所のガレージより東に向って後退させた際、前記場所で赤信号にしたがって停止中の被害車に、衝突させた。

二  責任原因

1  運行供用者責任(自賠法三条)

被告会社は、加害車を所有し、自己のために運行の用に供していた。

2  一般不法行為責任(民法七〇九条)

被告戸塚は、加害車を後退させるに際し、後方を十分に注視しながら後退すべき注意義務が存したのに、これを怠り、漫然後退した過失により、本件事故を発生させた。

三  損害

1  本件事故と因果関係を有する受傷等

(一) 受傷――外傷性頸部頭部症候群、第五腰椎分離症、腰部捻挫、腰痛症

(二) 通院――本件事故の当日より昭和五三年一月一一日まで、実日数二八五日。

(三) 後遺症――腰痛症等(後遺障害別等級表一四級に該当する。)

2  原告の損害

(一) 後遺障害に基く逸失利益――金五一万〇九五九円

(根拠)

年収――金三七四万一九二〇円

労働能力喪失率――五%

労働能力喪失期間――三年

右期間のホフマン係数――二・七三一〇

算式――

3,741,920×0.05×2.7810≒510,959

(二) 慰藉料――金一三七万円

通院分――金一〇〇万円

後遺症分――金三七万円

3  訴外株式会社日証(原告の勤務先である。以下、単に日証という。)の損害

(一) 治療費、診断書料(原告に対し災害補償として支払った分)――金一八万三九八五円

(二) 休業損害(現実には原告から労務の提供を受けなかったのに、受けたものとして給料、賞与を支払った分)――金二七三万六七一六円(その明細は別表のとおり。)

4  債権譲渡

原告は、昭和五三年一月一九日、日証より、右3(一)、(二)の「日証の被告らに対する損害賠償債権」金二九二万〇七〇一円の譲渡を受けた。

5  弁護士費用――金五〇万円

四  本訴請求

よって、原告は、被告らに対し、右三、2ないし5の合計、金五三〇万一六六〇円の内金四〇〇万円およびこれに対する訴状送達の翌日である昭和五三年五月二日から支払済まで、民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

第三請求原因に対する認否

請求原因一、二項の事実を全部認める。同三項の事実は全部不知である。

第四被告らの主張

一  本件事故と原告の傷病との因果関係の不存在

1  原告は、本件事故直後にその主張のとおり外傷性頸部頭部症候群の診断を受けてはいるものの、その時既に、変形性脊椎症の既往症を有していたのであるから、そもそも頸椎や肩の痛みすらも、本件事故ばかりに基くものとはいえないのである。

2  のみならず、腰部の傷病と本件事故との間に因果関係が存しないことは、右の頸椎や肩の痛み以上に明白である。

すなわち、本件事故後四ヶ月が経過し、頸部や頭部の痛み等が殆んど軽快した昭和五一年四月二三日になって初めて「腰部が“少し”痛い」旨の症状を呈し、腰部がさらに“悪化”するに至ったのは、同年五月三日になってからであるうえ、本件事故の態様も、加害車が後退するに際し被害車の側面にあたったというものであって、衝撃力の程度や方向からみて、頸椎や腰椎にそれ程の影響を与えるものとは考え難く、また、原告は、本件事故の二、三年前にも腰痛に罹患したことがあるのである。

二  なお、総損害額の算定にあたっては、被告より原告に対し支払済のため本訴請求外となっている治療関係費および交通費の合計、金六七万三六八五円を付加されたい。

第五被告らの主張に対する原告の答弁

一  被告らの主張一に対し

1  被告ら主張のとおり原告には本件事故以前に変形性脊椎症の既往症が存したものの、本件事故もまた、単に原告に対し外傷性頸部頭部症候群をもたらしたのみならず、その症状発現に際し、右既往症と相俟って、寄与するに至っているというべきである。

2  のみならず、原告の第五腰椎分離症、腰部捻挫、腰痛症もまた、本件事故と因果関係を有することは、明らかである。すなわち、原告に腰がおかしい旨の自覚症状が出始めたのは、本件事故の一、二日後であり、原告は、本件事故後約二〇日程して(但し、その間に正月休みがある。)、腰の治療に通い始めているのであって、さらに頸椎が損傷すれば、同一の脊椎が連なっている関係上、当然腰にも痛みをきたす可能性が存するものであり、本件事故直後より腰部に自覚症状が持続していた原告の場合には、本件事故と腰痛との関連性を考えなければならず、また、被告らも、本訴提起以前には、本件事故と腰部症状との因果関係を認めていたのである。

二  被告らの主張二に対し

治療関係費および交通費の合計、金六七万三六八五円が被告より原告に対し支払済のため本訴請求外となっていることを認める。

第六証拠《省略》

理由

一  事故の発生および責任原因

請求原因一、二項の事実はすべて当事者間に争いがない。そうすると、被告会社には、自賠法三条により、被告戸塚には、民法七〇九条により、いずれも本件事故に基く原告の損害を賠償する責任がある。

二  損害

1  受傷等

(一)  事実

(1) 本件事故の具体的態様等

《証拠省略》によると、以下の事実を認めることができる。すなわち、加害車の左後部角が被害車の左側面後部に衝突したため、被害車は一瞬右側に振動し、被害車後部左側の座席に同乗していた原告の身体は左右に揺れ、原告は、右横に倒れそうになった。以上の事実を認めることができ、これに反する証拠はない。

(2) 辻外科病院における治療等

《証拠省略》を総合すると、以下の事実を認めることができる。すなわち、①原告は、本件事故の当日の昭和五〇年一二月二三日に右辻外科病院で初診を受け、外傷性頸部頭部症候群と診断され、同五一年五月一日まで通院(実日数二六日)したが、その間において、自覚症状としては、頸背痛や頸が詰まるとか肩が痛く突っ張る等の、また、同年四月二三日の段階では腰が少し痛い(そのために局所注射を施される。)旨の各症状が、他覚的所見としては、X線写真における頸椎第三―四―五―六間の配列不正、頸肩筋硬結等の各所見がそれぞれ存し、そのための治療方法として、注射、投薬、湿布、マッサージ、牽引、鍼等を受けた。②尤も、原告には、本件事故以前からの既往症として(但し、発生時期は不明)、頸椎に変形性脊椎症が存し、右既往症の存在は、既に同五〇年一二月二七日の時点で、判明していた。③ところで、前記辻外科病院の辻尚司医師によると、「右既往症と前記腰痛との関係は不詳であるが、腰痛の原因は多く、また、右既往症のある人の方がない人よりも症状の発現をきたし易く、さらに、本件事故と腰痛とは、腰痛の発症時期が遅い点に照らして、直接には関係がない可能性が強いものの、頸椎が損傷すれば腰痛は当然に発生するものである。」という。以上の事実を認めることができ、これに反する《証拠省略》は、前掲証拠と対比し、採用ないし措信せず、また、右認定中の実通院日数に反する《証拠省略》は、診断書をもらったのみで治療を受けた形跡がないことおよび実通院日数の記載が存しないこと、《証拠省略》中の実通院日数が合計二八五日とある部分は、診断書等の原始的証拠との連絡が明らかでないこと、原告本人尋問の結果中の大川医院への通院分は、実通院日数が明らかでないことにそれぞれ照らし、いずれも採用せず、他に右認定に反する証拠はない。

(3) 松村鍼灸科院における治療等

《証拠省略》を総合すると、以下の事実を認めることができる。すなわち、①原告は、本件事故の数日後より俯せになったり、起き上ったりする際に腰痛を覚えるようになり、昭和五一年一月三日より同年五月三一日まで右松村鍼灸科院に通院(実日数五〇日)し、同年三月六日付診断書では頸椎骨捻挫および頸筋肉障害のほかに腰椎捻挫と、同年五月六日および同月一四日付のそれではいずれも腰痛と、同月二九日付のそれでは腰椎および腰筋障害と各診断され、右通院期間中における症状としては、くしゃみをしたり顔を洗うために腰をかゞめた際に腰に激痛を伴うとか、長時間坐っていると腰が疲れる等の、また、同月初め頃からはかゞみ込む瞬間に激痛が走り、夜も眠れず、寝返りも打てない旨の各症状が存し、同月初めから約二ヶ月にわたり寝込むに至り、その間勤務先の日証を欠勤し、そのための治療方法として、鍼灸、電気療法等を受けた。③尤も、原告は、同四六年暮頃(すなわち、本件事故の約四年前)にも出張時に強行軍をしたことが原因で腰痛を訴えた事があり、その際にも、前記松村鍼灸科院に数日通院したものの、それから本件事故時までは疲れた時に腰が多少だるい程度で腰痛のために医者通いをしたことはなかった。以上の事実を認めることができ(る。)《証拠判断省略》

(4) 国立大阪病院における治療等

《証拠省略》を総合すると、以下の事実を認めることができる。すなわち、①原告は、昭和五一年六月五日に右国立大阪病院で、第五腰椎分離症兼脊椎管狭窄症と診断(その発病時期は同年五月初め頃)され、自覚症状としては、右肢、右腰ないし右膝が痛く、また、坐ると痛くてじっとしておれない等の各症状が、他覚的所見としては、X線写真における第五腰椎の分離、根性坐骨神経痛、膝を伸展したまゝ前屈した時の床と手の先との距離約三八センチメートル、膝を伸展させて脚を挙上させた時の角度が右七〇度、左六〇度、脊椎の運動における硬直性等の各所見がそれぞれ存し、そのための治療方法として、投薬等を受けた。②ところで、前記国立大阪病院整形外科の川田嘉二医師によると、「脊椎分離症は、一般に高頻度にあり、しかも大方は無症状のものが多いのみならず、原告が本件事故以前に腰痛に罹患したことがある点に照らすと、本件事故と右①の傷病との結び付きは、全く断定することはできないと考えるのが正しい見方である。」という。以上の事実を認めることができ、これに反する証拠はない。

(5) 柴田接骨院における治療等

《証拠省略》を総合すると、以下の事実を認めることができる。すなわち、原告は、昭和五一年六月八日から同五二年九月一二日まで右柴田接骨院に通院(実日数一五九日)し、腰部捻挫と診断され、その間における症状としては、患部の腫れ、筋の硬直、運動時痛等の各症状が存し、その治療方法として、主に電気療法等の理学療法を受けた。以上の事実を認めることができ、右認定中の実通院日数に反する《証拠省略》は、診断書をもらったのみなので採用せず、他に右認定に反する証拠はない。

(6) 市立柏原病院における治療等

《証拠省略》を総合すると、原告は、右市立柏原病院に、昭和五二年四月六日、同月七日、同月一三日の三日間通院し、治療等を受けたことを認めることができ、これに反する証拠はない。

(7) 大阪赤十字病院における治療等

《証拠省略》を総合すると、以下の事実を認めることができる。すなわち、①原告は、右大阪赤十字病院で腰痛症と診断(その発病時期は昭和五一年五月)され、同五二年六月二七日から同五三年一月二六日まで通院(実日数三〇日)したが、その間において、自覚症状としては、腰部疼痛、下部背部痛等の各症状が、他覚的所見としては、X線写真における腰仙椎々間板症および第五腰椎関節突起間中の硬化、腰椎の生理的前湾減少、強直性、躯幹の伸筋緊張、第五腰椎から第一仙椎にかけての抵抗(但し、同五二年八月二四日の段階では、右抵抗は減少し、また、右段階では、第五―六頸椎間の配列における異常や第五腰椎分離症はなくなっている。)等の各所見がそれぞれ存し、そのための治療方法として、マット訓練、伸張運動、徒手矯正、腰椎牽引、コルセット装着(これは、同年九月一日)等を受けた。②ところで、前記大阪赤十字病院整形外科の大庭健医師によると、「本件事故と腰痛症の発病(前記のとおり同五一年五月)との間には約五ヶ月の空白があるため、右両者の直接のつながりは断定し難いが、原告が本件事故直後より腰部に自覚症状を持続していた場合には、右両者の関連性を考えなければならない。」という。また、同病院の朝田健医師によると、「首と腰とは同じ脊椎で連っているから、首に受けたショックが腰にくることは、あり得る。」という。以上の事実を認めることができ(る。)《証拠判断省略》

(8) 大川医院における治療等

《証拠省略》を総合すると、以下の事実を認めることができる。すなわち、原告は、前記大阪赤十字病院への通院を昭和五三年一月末頃にやめてから後は、日証への通勤を始めると共に、右大川医院に通院を始めたが、その症状は、ほゞ現在に至るまで、痛みがひどい時(この時には、鍼治療を受けている。)が続いたり、痛みが薄らぐ時が続いたりすることの「繰り返し」である。尤も、それでも当初の約六〇%方、回復した状態にある。なお、通勤の際にはラッシュの時間帯を避けて、遅刻して出勤している。以上の事実を認めることができ(る。)《証拠判断省略》

(二)  判断

右(一)に認定の事実のもとに以下に考えてみる。

(1) 原告における後遺症の存否について――①原告の症状は、右認定事実によれば、前記大川医院に通院するようになってからは、ほゞ同一の状態で「繰り返えされている」ことが明らかであるから、右症状は、同医院通院の直前、すなわち、前記大阪赤十字病院への通院をやめた時の昭和五三年一月末頃をもって、固定するに至ったもの、と判断して差し支えない、と考える。②ところで、右固定した症状が、後遺障害別等級表の一四級一〇号(局部に神経症状を残すもの。)に該当するか否かを判別するメルクマールは、昭和五〇年九月一日以降に発生した事故に適用される労働省労働基準局長の通達(法規に準ずるものと考えられる。したがって、本来証明の対象外というべきであるが、仮に証明の対象内に該当する場合であるとしても、公知である。)によると、「医学的に証明し得る症状は明らかではないが、自覚症状が単なる故意の誇張ではないと医学的に推定されるか否か、等」である。そこで、右通達に照らして、前記認定事実につき考えてみると、原告には、症状固定時以降も、右等級表一四級一〇号に該当する程度の後遺障害が残っているものといって妨げない、というべきである。

(2) 本件事故と原告の傷病(後遺症を含む。)との因果関係の存否について――前記認定事実によれば、「既に原告には頸椎に変形性脊椎症の既往症が存したのみならず、本件事故の約四年前にも腰痛に罹患したことがあったうえ、そもそも脊椎分離症自体が一般に高頻度かつ無症状に発生し易いものであるのに、原告の腰痛が激しくなったのは本件事故より約五ヶ月後のことである、しかしながら、他面において、頸と腰とは同じ脊椎で連っているから、頸椎が損傷すれば腰痛が発生する可能性が存するのみならず、本件事故直後より腰部に自覚症状が持続していた場合には、本件事故と腰痛との関連性を考えなければならないところ、原告は本件事故の数日後より軽い腰痛を覚えるようになり鍼や灸の治療に通院し始めた(なお、本件事故の約四年前に生じた腰痛の際には、数日間治療したのみで、その後に通院はしていない。)もので、また、本件事故の際に原告の身体は左右に揺れて右横に倒れそうになったものである」というのであるから、これを総合勘案すれば、結局、原告の傷病(頸部や肩部等のみならず、腰部等、さらには後遺症をも含め)と本件事故との間における因果関係の存在を否定し去ってしまうのは、相当ではない、というべきである。尤も、前記認定事実によれば、原告の右傷病は、過去に罹患した変形性脊椎症や腰痛等にも、相当程度基因していることが明らかであるから、本件事故の右傷病に対する寄与率を五〇%とし、右割合の限度における損害額をもって本件事故と相当因果関係のある損害と考えるべきである。

2  原告の損害――金一二七万六〇四六円

(一)  後遺障害に基く逸失利益――金二七万六〇四六円

《証拠省略》を総合すると、本件事故当時の原告の給与月額は、金一八万五五三〇円、賞与年額は、右給与月額中の基本給と付加給の合計額の五ヶ月分(上半期は、二ヶ月分、下半期は、昭和五一年と同五二年のほゞ平均の三ヶ月分とみた。)、すなわち一四万七九三〇円の五倍と、各認めることができ、これに反する証拠はない。そうすると、本件事故当時の原告の年収は、金二九六万六〇一〇円となる。

(算式)

185,530×12+147,930×5=2,966,010

また、前記1で認定の後遺障害に基く、原告の労働能力喪失率は、前記のとおり、原告の後遺障害が前記等級表一四級一〇号に該当する程度のものであることに照らし、五%とするのが、次に、その労働能力喪失期間は、前記1の認定事実に照らし、症状固定日以降二年間(なお、ホフマン係数は、小数点第五位以下を切捨てる。)とするのが、各相当である、と考える。

そうすると、原告の後遺障害に基く逸失利益は、金二七万六〇四六円(円未満切捨)となる。

(算式)

2,966,010×0.05×1.8614≒276,046

(二)  慰藉料――金一〇〇万円

前記認定の本件事故の態様、受傷の部位と程度、通院期間(実日数合計二六九日)、後遺症の内容と程度、年令、職業、その他諸般の事情を総合考慮すると、総額として、金一〇〇万円とするのが相当である、と考える。

3  日証の損害

(一)  治療費、診断書料――金一八万三九八五円

《証拠省略》を総合すると、日証は、原告に対し、治療費、診断書料、金一八万三九八五円を、災害補償として支払ったことを認めることができ、これに反する証拠はない。

(二)  休業損害――金二七三万六七一六円

《証拠省略》を総合すると、日証は、別表記載のとおりの原告の休日数(但し、欠勤のみならず、遅刻と早退を欠勤扱いに換算した分も含む。)を、業務上の災害に基く公休として扱い、現実には原告から労務の提供を受けていなかったにも拘らず、受けたものとし、同表記載の算式(すなわち、一ヶ月の勤務日数は二七日であり、賞与の算定に際しての欠勤控除は欠勤一日につき一八〇分の一であり、また、その他の金額等は同表記載のとおりである。)にしたがった金額(合計、金二七三万六七一六円)を、原告に対し、給料ないし賞与として、支払ったことを認めることができ(る。)《証拠判断省略》(因に、本件事故の直接の被害者である原告が、本件事故に基く受傷により就労不能となって欠勤し、原告が右欠勤期間中の給料等に相当する損害をこうむったところ、原告の勤務先である日証が原告に対し右給料等を支払って原告の損害を填補した場合には、右填補分に相当する、原告の加害者(被告ら)に対する損害賠償請求権は、肩代りをした日証に当然に移転するもの、と解するのが相当である。)

4  債権譲渡――金二九〇万七三八一円

《証拠省略》を総合すると、原告は、昭和五三年一月末頃、日証より、前記休業損害の全額および治療費、診断書料の内金一七万〇六六五円、合計、金二九〇万七三八一円につき、債権譲渡を受けたことを認めることができ、これに反する証拠はない。

5  原告の総損害額――金四八五万七一一二円

右二、2および4に、既払のため本訴請求外となっていることにつき当事者間に争いのない、治療関係費および交通費の合計、金六七万三六八五円を付加すると、金四八五万七一一二円となる。

6  本件事故と相当因果関係の範囲内にある原告の損害額――前記のとおり、原告の総損害額の五〇%であるから、金二四二万八五五六円となる。

三  損害の填補――金六七万三六八五円

前記、金六七万三六八五円が既払であることは当事者間に争いがないから、これを右二、6より差引くと、残損害額は、金一七五万四八七一円となる。

四  弁護士費用――金二〇万円

本件事案の内容、審理経過、認容額等に照らすと、金二〇万円とするのが、相当である。

五  結語

よって、被告らは各自、原告に対し、金一九五万四八七一円およびこれに対する訴状送達の翌日であることが本件記録上明らかな昭和五三年五月二日から支払済まで民法所定年五分の割合による遅延損害金を支払う義務があり、原告の本訴請求は右の限度で理由があるから正当として認容し、原告のその余の請求は理由がないから失当として棄却し、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九二条、九三条、仮執行の宣言につき同法一九六条を各適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 柳澤昇)

<以下省略>

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